私は巽に送られ、家に帰った。
ずっと、抜け殻の様だった。
ハルが死んだのは現実と、受けとめられなかった。
大地の家に行けばハルが居るような気がした。
と同時に行くのが怖かった。
私と拘わったばかりに死んでしまったから。
私のせいで死んでしまったから…。
巽が時々学校へ、様子見に来てくれた。
法事で岡山に行っていたハルの両親が帰ってきて、お通夜と葬式は済ませた事、墓も発注して四十九日には納骨する事、大地がもし来れたら納骨に来いと言っていた事を話してくれた。
巽の話は上の空で聞いていた。
私が行ける訳、無いじゃない…。
私が殺したようなものなのに、行って両親に何て償えばいいの…?
抜け殻の状態のまま、三者面談の日が来た。
担任の女先生、母、私の三者で始まった。
「志望校は能代工業…と言う事ですが、ご両親もこれで…?」
母が驚いた顔をした。
「まだそんな事言ってたの?」
私を見た。
「お母さんは、反対なんですね?」
「私は地元の高校で良いと思ってます。千奏の成績では難しいでしょうか?」
「地元だと千奏さんの成績では問題なく入れると思います。…地元にしよう?千奏さん。」
私はまだ能工を受験するつもりだった。
「…父さんは…良いって、言った…。」
「男が入るのと女が入るのとじゃ、違うんだよ!?」
母の剣幕は凄かった。
私はぼんやりと、でも自分が否定されているようで反発した。
「男だから、女だからって区別しなくても、私は建築を学びたい、教わりたい…っ!」
母は負けなかった。
女先生も便乗した。
「建築は力のある男の方が向いてるんだ。」
「男女共学だって言っても、男子の比率が多いんだから。」
「建築がやりたかったら、地元高校終わってからでも学べるし!」
建築が女に向いてないという意見から、選択を後回しにするように意見を変えてきた。
「そうそう、本当にやりたかったら大学進学だって出来るんだし。」
「千奏が望むなら大学だって行かせてやる。」
当時、兄は公務員だった。
受験前ギリギリで音大に行きたいと言ったが、聞き入れてもらえなかったのを私は知っていた。
それなのに私は大学に行っても良いと言う。
信用出来るのだろうか…。
それ以前に今能工に進まないと、私の中の建築に対する情熱が冷めるような気がしていた。
もう少し自分の意見を通そうかと思っていると、母が言った。
「母さんは、工業に行かせたくない。」
“俺が親だったら、絶対入れない。”
ハルの声が聞こえた気がした。
じっと膝の上の拳を見つめた。
「……分かりました。」
母と女先生はホッとした顔で面談を終わらせた。
私は我慢して教室に戻った。
クラスメイト数人が、戻った私に声を掛ける。
「どうした?」
「何か言われたか?」
その時の私は余程哀しい顔をしていたのか、みんな寄ってきた。
みんなの優しさに、堪えていた涙が噴き出した。
自分の望む進学が出来なかった悔しさと、ハルを思い出した哀しさが一気に押し寄せてきた。
普段の私なら泣き顔なんて負けたような気持ちになるので、絶対泣かなかったのに、そんな気持ちも何処かに行く程哀しかった。
私は机の上に突っ伏して泣いた。
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