ふっと気付くと、Tシャツは傍に脱ぎ捨てられ、下着は外され、胸はスースーしていた。
鈍い痛みのする頭を抱え、上体を上げる。
酒が入るとその日の内に頭痛がする。
私の場合は二日酔いと云うより、一日酔いと云う方が合っている。
周りを見回すと知らない部屋。
部屋の真ん中に蛍光灯の灯りが付き、紐がぶら下っている。
窓は開いてレースのカーテンが冷たい風になびいていた。
ベッドと物置状態の机と、申し訳ない位の本棚と大き目の鏡。
小さめなテーブルに日本酒、焼酎、チューハイとカクテルの空き缶、空き袋からこぼれ落ちたツマミ…。
あぁ、仲間の部屋か…。
傍にあるTシャツを身に付け、私は部屋の扉をそっと開けた。
暗がりの中で、廊下の先には下へと続く階段があった。
窓からは星が見える。
扉の隣に同じ扉があった。
そっと開けると机に向かっている男の子が居た。
男の子と言っても私より身体つきが良いし、顔付きも男らしかった。高校2、3年と言ったところだろうか。
何か感じたのか、男の子と私は目線が合った。
ビックリしたように私を見ている。
「…何?」
低いけど、澄んだ声だった。
「…ごめん…。」
邪魔したみたいで、私は扉を閉めた。
かちゃん、とすとす、と椅子から下り、足音が聞こえた。
閉めた扉が開かれ、私の目の前に男の子が現れた。
私の目線には鍛えられた胸。Tシャツの上からでも分かる。
上に目を上げると、少しひげが見え始めている顎が目の前に迫る。
「…兄貴なら来ないよ。」
階段の方に親指を指す。
グオー、グオーっといびきが聞こえた。
「多分、氷を取りに行ってそのまま倒れたようだけど。」
「…そう。」
私は扉を開けたまま部屋の中に戻り、空き缶とツマミの袋をコンビニ袋に入れ、蛍光灯の紐を引っ張った。
「…帰るの?」
暗くなった部屋に声だけが聞こえた。
「うん。友達の家に行く。」
「帰らないの?」
部屋の入口まで来ると廊下の灯りが私の顔にあたった。
「家、遠いもん。」
「…俺の部屋に来る?」
男の子の顔をじっと見た。
澄んだ目をしている。
「…良いの?」
それには答えず、自分の部屋に入って行き、ベッドの上に置いてある上着を片付けていた。
兄の部屋と違うのは、壁一面に本棚がある事だった。
しかも参考書や、通信教育の本、辞典ばかりが並んでいる。
棚の下の方に二輪の本が数冊、あった。
それも、六冊の内、モーター関係の本が五冊。
私がしゃがみこんで聞いた。
「二輪に興味あるの?」
「…別に。」
私は兄貴の二輪にタンデムでここまで来た。
兄貴が乗ってれば、弟も興味があってもおかしくないか。
「整備とかするの?」
椅子に腰掛け、机に向かう。
私の問い掛けは無視。
「本棚の下端にあるのは、その人が本当に興味を持っている本なんだって。」
動いていたシャープペンが、ピタッと止まった。
直ぐに又動き出す。
「うるさくするなら出てっても良い。」
他の本を見回す。
通信教育の本は高校三年六月まで揃っていた。
今は八月だから、今机の上にあるのは七月と、八月の本なのだろう。
「何処、受験するの?」
手を動かしたまま答えた。
「東北大学。」
「へー。…高校って楽しい?」
ピタッと手を止め、ゆっくり私を見た。
「…中卒?」
首を横に振る。
「中退?」
又横に振った。
「…今、中三。中退なんかしてないよ。」
明らかに驚いた顔をしている。
私はいつも二つ三つ年上に見られる。
「こんな所で酒なんか飲んでる場合じゃないだろ。」
「大人と同じ事言わないでよ。」
「受験だろ?」
「別に良い高校行く訳じゃないから。」
「…頭、良いんだ?」
「酒かっくらってて、良い訳無いじゃん。」
私が笑うと、椅子ごと身体を私に向けた。
「何処受けるのさ。」
「…能工。」
「能代工業?女なのに?」
「それ、差別じゃん。」
「専門学科でも受けるのか?」
「うん、建築コース。」
「建築…。倍率高いだろう?」
「う…ん、まぁ。でも2倍程度だよ。」
「勉強しろよ。」
「その前にやる事があるんだ。」
「?何。」
「母親を口説き落とすこと。工業に入るの、反対してるんだ。」
「…分かる気はするな。俺が親だったら、絶対入れない。」
「何で。」
「女だからさ。工業は男が多いから、何があるか分からない。それに、通いじゃないんだろ?寮に入るなら…それこそ何があるか…。」
「何かって何?」
「何って…。」
私の胸元を見ている。
私は視線を下げた。
白いTシャツに二つ、突起が見える。
乳首が透けて見えていた。
「ブラ忘れた。」
兄の部屋に戻ろうと、立ち上がり、ドアに向かった。
ドアノブに手を掛けようとした時、腹部に腕がまわった。
ぐっと後ろに引っ張られ、ベッドの角に踵がぶつかった。
「痛っ!」
そのまま後ろに放り投げられた。
ベッドの上で身体がバウンドした。
Tシャツの上から熱い手が、胸を揉みしだく。
首筋に生暖かい感触がする。
首から耳の下まで舐められた。
「…ひゃあ!」
鎖骨に唇が当たり、吸い付かれる。
私は何がおきたのか分からなかった。
Tシャツの裾を捲り上げ、乳首に吸い付いた。
Gパンのボタンを外し、一気に膝までズリ下げる。
下着まで一緒に下がり、下腹部が曝け出された。
胸の中に氷を放り込まれたような、悪寒が起こる。
「イヤッ!」
胸に頭があってGパンまで私の手が届かない。
必死に膝を曲げてそれ以上下がらないようにする。
曲げた膝の裏に手がまわり、グッと上に待ち上げられた。
胸から舌が離れ、片腕で私の膝の裏を押された。
赤ん坊のオムツ替えのような格好になる。
「イヤーッ!!」
叫んで上へと逃げる私に構わず、指で外陰部を広げて舐めてきた。
「あぁっ!?」
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